桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第44回】

『赤毛のアン』(L.M.モンゴメリ)

開催日時 2008年11月15日(土) 14:00~17:00
会場 石神井公園区民交流センター 2階・和室(2)

開催。諸々コメント。

『赤毛のアン』は1908年6月にルーシー・モード・モンゴメリが著した長編小説です。
主人公アンはカナダのプリンセス・エドワード島に住む孤児。
物語はマシュウ、マリラの年老いた兄妹が、自分達の農場を引き継がせるために孤児院に依頼し男の子を家に迎え入れようとするシーンから始まります。
しかし近くの駅に来ていたのは赤毛の少女、アンでした。
戸惑いながらもマシューとマリラの愛情に包まれてアンは美しい女性へと成長していきます。
アンは優秀な成績を修めて学校に先生になりますが、マシュウの死によって人生が大きく変わろうとしたとき、小学校時代からの友人ギルバートによって助けられます。

様々な身の回りの事件を起こしながら、懸命に、明るく、前向きに生き続けるアンの姿に多くの人が感動と勇気をもらったのだと思います。
作品の発表から今年で100年の節目を迎えました。
年月を経てもなお輝き続ける名作を一緒に読みたいと思います。

アンの世界

モンゴメリは新聞記事で読んだ男の子と間違えて女の子を引き取った夫婦の話に着想を得てこの作品を書いた。
プリンス・エドワード島の田舎で育った自身の少女時代も作品に投影した。
孤児院暮らしだったアン・シャーリーが、11歳でアヴォンリーのカスバート家に引き取られてからクィーン学院を卒業するまでの少女時代5年間を描いた『赤毛のアン』は人気作となり、モンゴメリはアンを主人公とする続編や周辺人物にまつわる作品を多数執筆。
イヴリン・ネスビットの写真を雑誌から切り取り、書き物机の上に貼り、主人公アン・シャーリーのモデルにしたとされている。
第1作『赤毛のアン』ほか、シリーズ全作には、ウィリアム・シェイクスピアやイギリス、アメリカの詩、『聖書』の句が多数引用されている。
『赤毛のアン』を読んだマーク・トウェインはモンゴメリに1908年10月3日付けで
「the dearest and most moving and most delightful child since the immortal Alice」(「かの不滅のアリス以来最も可愛らしく、最も感動的で最も利発な子」)
と絶賛の手紙を送った。

作品の感想

『赤毛のアン』が発刊されて今年でちょうど100年の節目を迎えました。NHKをはじめ100周年を記念した催しが様々行われてきました。ただマスメディア全体では大きく取り上げられることは少なかったように思います。

赤毛のアンはTVアニメでファンになったという人も多いと思います。年代的にはたぶん私よりも少し若い世代、もしくはちょっと上の世代で子供と一緒に見たというお母さん世代になるかなと思います。
私は残念ながらアニメを見る機会はなく、全文を読み通したのは今回が初めてでした。
日本語訳としては村岡花子氏によるものが長く親しまれてきました。1993年に松本侑子氏による訳本が発刊され、現在ではこの両者の日本語訳が読まれているように思います。
※村岡訳については2008年の発刊100周年にあわせて、遺族の手によって新たに推敲が加えられて現在に至っています。
※松本訳については2000年の文庫本化にあたり改訂が加えられています。

今回は私の中では充分に準備できなかったという反省があります。
作品全体を通して参加したメンバーの感想を語っていただいたりしましたが、従来の回に比べても作品の時代背景などの考察も不充分だったと感じています。
この週末に再度読み直してみましたらいくつか「これは重要だな」と思われる点が出てきました。例えば...
・フランス系移民とイギリス系移民の時代変遷と境遇の違い
・アンとギルバードの相手に対する気持ちが変化していく心の機微
・アンを取り巻く大人たちの心の変化とその源泉
・マシューとマリラの生き方に見る当時の人生観 などなど
考えてみると、どれも『赤毛のアン』にとっては重要なファクターです。

また、作品中にちりばめられているイギリス文学の数々、聖書から引用している言葉と思想、当時の政治状況と庶民の政治に対する考え方、当時の生活習慣、モンゴメリの人生、エドワード島の自然、なぜ赤毛のアンが読み継がれてきているのかなど、当日取り上げた内容についても、もっと深く考察することができたのではと思い、参加いただいた方々には申し訳なく思っています。 今回の反省を生かして、次回以降の準備にあたりたいと考えております。
また今回初参加いただきました本田さん、高橋さんありがとうございました。

関連文献

『赤毛のアンへの旅-秘められた愛と謎-』(松本侑子)NHK出版
『赤毛のアン(もっと知りたい名作の世界10)』(桂宥子・白井澄子編著)ミネルヴァ書房

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