桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第75回】

『十五少年漂流記』(ヴェルヌ)

開催日時 2011年7月30日(土) 14:00~17:00
会場 西武池袋線中村橋駅・徒歩5分 サンライフ練馬 第二和室

開催。諸々コメント。

今月の本は『十五少年漂流記』です。小中学生の夏休み課題図書の定番の一冊です。
1860年3月9日夜。
荒れ狂う太平洋上で翻弄される帆船(スクーナー船)。少年だけ15人が乗り込んでいる船で沈まないように奮闘するシーンから物語が始まります。
彼らはニュージランドの首都オークランドでチェアマン寄宿舎に通うこの地域の上流階級の子息達。学校の休暇を利用してニュージランド周辺を探索する予定で前日に船に乗り込んでいた少年たちでした。

難破の危機を乗り越えて奇跡的に陸地に漂着しますが、そこは大陸の一部なのか孤島なのか・・・。
生き延びるための努力や工夫をするために団結する一方で、少年同士の対立も決定的になっていきます。
物語はどのような結末を迎えるのでしょうか・・・
十代の少年少女に戻った気持ちで作者ヴェルヌの思いを感じながら読み進めてみたいと思います。

作品の構成・あらすじ

第一部
1章
1860年3月9日夜。荒れ狂う太平洋上で翻弄されるスクーナー(帆船)。少年だけ15人が乗り込んでいるスラウギ号で上級生の4人の少年は船が沈まないように奮闘する。年長のゴードン、わずかな航行経験があるブリアン、ドニファン、見習い水夫のモコだ。 嵐に翻弄される彼らの眼前に陸地が見えた。
2章
潮の満ち引きを待とうというブリアンとゴードン。しかしドニファンたち4人のグループは残っていた雑用艇で自分達が先に上陸すると主張する。ドニファンとブリアンがけんかになるところをゴードンが仲裁する。暗礁の上に綱を張る試みも失敗するが押し寄せてきた大波に運ばれてスラウギ号は砂浜の真ん中に乗り上げた。
3章
少年達はニュージーランドの首都オークランドでチェアマン寄宿舎に通うこの地域の上流階級の子息達。1860年2月15日、明日から学校の2ケ月間の休暇を利用してニュージーランド周辺を探索する予定で船に乗り込んでいた。その夜何らかの原因でロープが外れ強い風で船は沖に流される。途中カンテラは落ち汽船にすれ違い船尾を破損するが気がつかれない。進路を変えることもできず嵐に襲われ太平洋の見知らぬ土地に流れ着いた経緯が語られる。
その頃オークランドでは破損した船尾が発見され少年達の船は沈没したと思われてしまった。
4章
少年達の生活が始まった。当面2ケ月程度の生活物資はスラウギ号に残っていた。当面の寝る場所は船内にした。15人の少年は貝を獲ったり魚を釣ったり自分のできることを実行し始める。
5章
ゴードン、ブリアン、ドニファンが話し合い3月15日ブリアンが探検に出た。海岸に沿って岬に立つ。東に広がる土地の先に青白い線を発見した。「海だ!」ここは大陸ではなく島だ。ブリアンは胸がしめつけられるような思いで少年達の元に帰る。
6章
ブリアンの報告を聞いた少年達は驚愕する。しかしドニファンは納得できず自分で探検に行くと主張する。直後に天候が悪化し数日が経過、4月2日に探検に出発することになった。
7章
ブリアン、ドニファン、ウィルコックス、サーヴィスの4人が2回目の探検に出発した。浅い川で人が並べたような石を発見。夜営した茂みは人が作ったアジウパだった。人が住んでいたことは間違いない。東に広がっていた水面は水平線までつながっていた。海だと思って帰りかえたが犬のファンが駆けていき水を飲み始めた。真水だった。そこは海ではなく湖だった。
8章
湖ではあるが大陸の一部か島なのか。少年達は南に向かい、翌日壊れた船体の破片と木に刻まれた「F.B1807」の文字を発見する。そして人の住んでいた洞窟に辿りつく。
9章
少年達は洞窟に入った。人が生活していた形跡がいくつも残っていた。その人の名は「フランソワ・ボードアン」で52年前にデュゲート・ルーアン号で漂着したと思われた。ボードアンは手書きの地図を残していた。この土地は島だった。少年達はボードアンの墓を作り帰路に就く。迷いかけるがゴードンの上げた信号のおかげで無事帰りつく。
10章
翌日4月5日からフレンチ・デンへの引越しが始まった。少年達は協力して知恵を出し合い荷物の移動が完了した。
11章
フレンチ・デンでの生活が始まった。モコは料理の腕をふるった。全員で部屋をレイアウトしかまども作った。野獣の存在も判明。ダチョウを捕まえて飼育を試みる。
12章
洞窟を広げる作業が始まった。ひょうが紛れ込むハプニングがあったが広いホールと2つ目の入口もできた。皆の合意のもと島の大事な場所に名前を付けた。島の名前はチェアマン島と命名した。そして初代大統領にゴードンが選ばれた。
13章
5月末になり10月初めまで5ケ月間の冬の季節を迎えた。みんなの日程表が作られた。チェアマン島の出来事を日記につけることにした。水道管を引き薪を集めた。ペンギンやあざらしを獲ろうとしながら冬を過ごしていく。
14章
春になり、残っている北、南、東の探検を再開することに。新しい車を作ろうと奮闘する。11月5日朝、ゴードン、ドニファンはじめ7人の少年達が探検に出発。地図の写しに従って未知の土地を確認していった。
15章
様々な発見の連続。少年達は無事洞窟に帰りついた。
第二部
1章(16章)
ブリアンの弟ジャックが何か秘密を持っていることが確定的に。砂糖かえでを発見。キツネ狩りも行なった。12月5日全員でスラウギ湾を探検。12月25、26日最初のクリスマスをチェアマン島の新年とした。下級生達は「ブリアン万歳!」と叫んで感謝をあらわした。
2章(17章)
1861年を迎えた。ブリアン、ジャック、モコの3人でボートに乗って東の海を調べる探検に出発した。東の海には水平線が広がっていた。ジャックはブリアンに秘密を告白する。モコも聞いてしまうが他言しないことを誓う。探検が終わり皆のもとに帰りつく。
3章(18章)
ブリアンは危険な役割をジャックにやらせるようになる。各人が様々な役割を果たす。輪投げが契機となってブリアンとドニファンが争いになる。5月25日初雪。6月10日投票が行なわれ第2代大統領にブリアンが選ばれた。
4章(19章)
ドニファンのブリアンへの反目が激しくなっていく。8月25日スケートに出た時に勝手な行動をとったドニファンは皆に迷惑をかける事件を起こした。
5章(20章)
ブリアンとの対立が決定的になったドニファンは、クロック、ウェッブ、ウィルコックスの4人でフレンチ・デンを出ることになった。
6章(21章)
新しく暮らす洞窟を確認したドニファン達は島の北側を探検する。そこで難破した船と2人の倒れた人間を発見する。恐ろしくなって森へ逃げ込む。翌朝引き返すが2人の死体はなかった。難破船には「サンフランシスコ・セヴァーン号」と書かれていた。
7章(22章)
ブリアン達は助けが来た時の目印に大きな凧をあげようとする。そんな折り森の中に倒れている女性を発見する。アメリカ人のキャサリン・レディ、ケートだった。乗っていた船で暴動がおこりケートと運転士イバンズけが残り他の人は殺された。船で火事が発生、ボードに乗り移るが嵐に巻き込まれて漂着した。悪人ウォルストン一味が上陸していることがわかった。悪人と戦うことを決意したブリアンはドニファン達を迎えに行き、ドニファン達はフレンチ・デンに帰ってきた。
8章(23章)
15人の少年とケートは団結した。まだ悪人達がいるか確かめるために夜間に凧をあげることにした。
9章(24章)
7日夜、凧上げの実験は成功。そのまま実行することになった。凧にはジャックが乗ると志願。いぶかる仲間達にジャックは自らの過ちを告白する。みんなはジャックを許した。凧にはブリアンが乗った。東の海に火山島が見えた。ファミリー湖の東5、6マイルに火が見えた。ウォルストン一味はまだ島にとどまっていた。
10章(25章)
近くに火山島があるなど離れ島でないと考えた少年達はウォルストンの襲撃に備えた。児スターが熱を出すがケートの看護で一命を繋いだ。11月21日ウォルストンが射撃したリャマを発見。24日朝ウォルストン一味のたばこパイプがみつかる。27日セヴァーン号の操舵手イバンズがホールに駆け込んできた。
11章(26章)
イバンズの話でウォルストンの考えが判明した。チェアマン島は南アフリカ大陸の海岸沿いの群島の一つ、ハノーバー島だった。
12章(27章)
少年達は島から脱出するためにウォルストン一味のボートを手に入れることにした。ウォルストン一味は助けを求めてくるふりをすると予測した少年達のもとへ2人の男がやってくる。ロックは逃げだすがフォーブスを捕えた。
13章(28章)
午後2時イバンズと上級生達は偵察に出る。男達と射撃戦に。ドニファンが重傷を負う。ウォルストン一味は洞窟を襲った。ジャックが連れ去られようとした時フォーブスが男達を攻撃した。男達はボートで逃げようとするがモコが発射した大砲で撃沈した。
14章(29章)
フォーブスはジャックを助けた時に負傷した傷で息を引き取った。悪人はまだロックとコープが残っていたが、森の中でコープの死骸が見つかり、ロックは落とし穴にかかり死んでいた。悪人達からの危機はなくなった。ドニファンの傷も回復に向かった。ボートの修繕が始まり30日間かかって1月8日に終わった。ドニファンの回復を待って2月5日に出航。8時間後には海峡にさしかかりケンブリッジ島の砂浜が見えてアデライド島の沖に出た。
15章(30章)
2月13日オーストラリアに向けた汽船グラフトン号に遭遇した少年達はグラフトン号に乗り移り2月25日にオークランド湾に錨を降ろした。少年達の2年間の休暇が終わった。ドニバンは何度も講演した。バクスターが記した日記は各国語で出版された。ゴードンの沈着、ブリアンの誠実、ドニファンの勇気、上級生下級生の忍耐が称賛された。ケートとイバンズも歓迎された。どんなに危険な状態に陥っても秩序と熱心と勇気をもってすれば切り抜けられないことはない。

主な登場人物

ブリアン(フランス人、13歳)
土木技師の息子で、ジャックの兄。勉強嫌いなため成績は悪いが頭の回転は速く、下級生を助けるためには上級生との喧嘩もいとわないことからみんなから慕われる。ドニファンには一方的に敵意を持たれていたが、彼の命を助けた事で和解する。
ジャック(フランス人、10歳)
ブリアンの弟。歌とスケートが上手い。いたずら好きで明るいが、何故か漂流してからは別人のようになってしまい、ブリアンに心配される。実は彼には誰にも言えない秘密が……。
ゴードン(アメリカ人、14歳)
最年長で唯一のアメリカ人。父も母もなくオークランドに住む親類の家に引き取られている。几帳面でありながら冷静沈着で物事を考えることから皆から尊敬されている。その人柄故に初代大統領に命じられ、ブリアンとドニファンの仲裁も行う。物事をこまめに手帳に書き留めている。猟犬ファンを連れてきている。植物についても造詣が深く、チェアマン島に自生する草木から、有用な種を見つけ出したりしている。
ドニファンまたはドノバン(イギリス人、13歳)
金持ち地主の息子。15人の中で多数を占めるイギリス人のリーダー的存在。すぐにいばりたがるため「ドニファン卿」とあだ名が。頭が良く負けず嫌いで成績は良い。射撃の名手で集団で狩猟する際に隊長を任される。ブリアンの人気があるため、彼に対抗心を燃やし対立する。ブリアンとの和解後は、ジャックが自らの過ちを明かした際に一番先に許し、ブリアンを守るために身を投げ出した。根は優しい。
クロッスまたはクロックス(イギリス人、13歳)
ドニファンの従兄。地主の息子。ドニファンの言うことにはいつも賛成し、彼を尊敬している。
バクスター(イギリス人、13歳)
あまり裕福ではない商人の息子。大工仕事が上手く、手先が器用。漂流先でも様々な工夫を凝らして道具などを自作し、みんなの生活を助ける。書記に命じられ、島での日記を付ける。
ウェップまたはウェッブ(イギリス人、13歳)
父親は裁判所に勤務。我の強い性格だが、ドニファンのことは尊敬している。
ウィルコックス(イギリス人、13歳)
父親は裁判所に勤めている。島での獲物を捕らえる手段は銃が主流だったが投げ縄などの罠を考案。弾丸や火薬を使わずに狩りが出来て大いに重宝された。ドニファンを尊敬している。
ガーネット(イギリス人、12歳)
スラウギ号の所有者でもある元商船団長の息子。サービスと仲が良い。アコーデオンが大好きで漂流先にも持ってきており、行事の際にみんなに演奏を披露。上級生による島での探検に参加したことはない。
サービスまたはサーヴィス(イギリス人、12歳)
一番陽気で、ユーモアがあるムードメーカー。愛読書は「ロビンソン・クルーソー」と「スイスのロビンソン」。島での生活では、家畜の飼育や料理を担当する。ロビンソンに憧れて(ロビンソンは島で見つけたオウムを飼い慣らしたというエピソードがある)、島にいたダチョウに似た鳥レアを飼い慣らそうとするが失敗する。
ジェンキンスまたはジェンキンズ(イギリス人、9歳)
ニュージーランド王立科学協会の会長の息子。チェアマン寄宿学校で一番の優等生。
アイバースンまたはアイバーン(イギリス人、9歳)
牧師の息子。優等生。
コスター(イギリス人、8歳)
ニュージーランド陸軍将校の息子。最年少。食いしん坊。
ドール(イギリス人、8歳)
ニュージーランド陸軍将校の息子。コスターよりも6ヶ月年上。甘い物が好き。
モーコーまたはモコ(黒人、12歳)
見習い水夫として、船に乗り込んでいた。黒人であるため島での大統領選挙における投票権はないが、非常に器用で料理やボートの操縦など様々なことをこなす。島での生活を通して、ブリアンを慕うようになる。
ファンまたはフヮン(犬)
ゴードンの連れてきた猟犬。狩りで活躍し他にも節々で重要な役割を果たす。
エバンズまたはイバンズ
汽船「セヴァーン号」の操舵手。ケートと共に命を助けられ少年達と一緒にウォルストン一味と戦う。
ケイトまたはケート
セヴァーン号に乗っていた元家政婦。少年達に助けられ、少年達と共にウォルストン一味と戦った。
ウォルストン一味
セヴァーン号で反乱をおこして船を乗っ取った悪人達。船の火事でチェアマン島に漂着した。

著者

ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne, 1828年2月8日~1905年3月24日)
フランス西部ペイ・ド・ラ・ロワール地方のナントで生まれる。生家はロワール川の中州の一つであるフェイド島にあり、子供時代を過ごした。この人里離れた孤立が彼の想像力と兄弟との絆を強くした。また、この当時のナントは交易が盛んで、異国情緒豊かな港町。ナントに訪れてくる船乗りたちの冒険話もヴェルヌの冒険心と想像力をかきたて、彼は海の英雄になることを夢見たという。
父のピエールは地元の弁護士であり、論理的な人であった。その性格を示す逸話として、自宅から事務所までにかかる歩数を知っていたことや、望遠鏡で教会の時計を見て、常に正しい時間を確認して行動していたなどといったものが残されている。父の性格はヴェルヌ作品の登場人物にも受け継がれる。母のソフィーは船乗りの家系の出で、ヴェルヌに「まるで竜巻のよう」とたとえられるほどの想像力の持ち主であった。
ヴェルヌは5人兄弟の長男で、特に彼と同じく海に憧れを持つ弟のポールと仲が良かった。弟はのちに海軍に入隊。ヴェルヌは父の後を継ぐために法律を勉強し学校はナントのリセに行った。成績は普通で特にラテン語をよくし、数学好きであった。運動も得意で学校の外では「広場の王様」とあだ名された。
11歳のときに、初恋の相手であるいとこのカロリーヌにサンゴの首飾りを買ってあげようと、密かに水夫見習いとしてインド行きの帆船に乗船した。しかし途中で父に見つかり「もうこれからは夢の中でしか旅行はしない」と言ったという逸話は有名である(事実かどうかは不祥)。
1848年、父の勧めによりパリの法律学校へ進学。そこで多くの芸術家たちと交流した。これはヴェルヌの才能を見た母が、パリにいた親戚に取り計らったことによるものであった。パリでの生活は充実していたが金銭的には余裕のない生活であったらしい。
アレクサンドル・デュマ父子と出逢い、劇作家を志すように。大デュマがプロデュースした、ヴェルヌの処女作『折れた麦わら』は好評で2週間上演された。

その一方でヴェルヌは自然科学の論文も読んでいた。1840年代に彼のお気に入りの作家であったエドガー・アラン・ポーが、小説に科学的事実を取り入れることによって、物語に真実味を持たせるという技法を示し、これに興味を持つようになっていった。
友人フェリックス・ナダールが製作した気球に触発されて、1863年に書いた冒険小説『気球に乗って五週間』が大評判となり、流行作家となる。そして編集者のジュール・エッツェルと契約を結んで、生涯にわたって科学・冒険小説の傑作を生み出してきた。
1883年にはアミアン市会議員に当選し死ぬまで在職した。晩年には甥に襲撃されたこともあり、悲観主義的傾向が強くなったと言われるが、近年偶然に発見された初期の作品『二十世紀のパリ』(作中で文明批判を展開)に見るように、悲観主義的な一面は当初から持ち合わせていたようである。

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