桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第82回】

『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)※後半

開催日時 2012年2月25日(土) 14:00~17:00
会場 西武池袋線石神井公園駅・徒歩1分  石神井公園区民交流センター 会議室(1)

開催。諸々コメント。

先月に引き続き『カラマーゾフの兄弟』を取り上げます。
作品は佳境に入ります。
ドロドロとした親子の相克の争いは殺人という形で大きく展開していきます。
フィードル・カラマーゾフが殺害され父親殺しの犯人として長男ドミートリーが逮捕、裁判が進んでいきます。メインとなるストーリーに加えて、ゾシマ長老の死にまつわる人々の心の動きや科学の進展に伴う無神論的生き方の是非が問われていきます。
キリスト教の信仰のあり方で人の幸福を築くことができるのか。
そして人生を絶望して生きてきた底辺の人々がそれでも希望を持って生きていこうとする前向きな生き方が現実の生活の中でなんども押しつぶされていきます。
一人の人間の中にあって何度も右に左に揺れ動く心の危うさ。真実の思いとはどこにあるのか。そもそも自分自身においても真実の気持ちを持っているのかさえあやふやに思えてきてしまいます。
次兄イワンのモスクワでの秘められた行動をどのようにとらえるのが適切なのか?多くの人は「否」とは言えるとしても、なぜ彼がそのような行動にのめり込んで行ったのか、どうすれば別の道を歩めたのか、その答えを求めることは容易ではないと感じます。
判決の前日にはスメルジャコフが自殺、イワンは直後の裁判の場で自身が突き止めた真実を公にしますが聴衆の反応は...そしてイワンは精神病で発狂します。
一般的な書評では「父親殺しの推理小説」のように書かれていることも多い本作品ですが、ドストエフスキーがこの作品で訴えるものはその程度のことではないのは自明の理です。
人々の思いはどこに行くのか。
そして三男アリョーシャの行動は...。

ドストエフスキーの遺稿となった『カラマーゾフの兄弟』。
少しでも筆者の思いに迫っていきたいと思います。

主な登場人物

フョードル・パーヴロヴィチ・カラマーゾフ 家の家長。強欲で好色な成り上がり地主。自ら道化師に徹して生きた。前妻には駆け落ちされ、後妻には先立たれている。
ドミートリイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ(ミーチャ) フョードルの長男。27歳。フョードルと前妻の子。退役軍人。放埒で堕落した生活から抜けきれない、直情型の人物。フョードルの企みによって、自分の全財産がどれほどなのか知らぬままありったけの金を使い込み、それによって婚約者のカチェリーナに借金をしてしまう。さらにグルーシェンカをめぐってフョードルと醜悪な争いを繰り広げ、それが最悪の結果を呼び起こす。
イヴァン・フョードロヴィチ・カラマーゾフ(ワーニャ) フョードルの次男。24歳。フョードルと後妻の子。理科大を出た知識人。合理主義・無神論を気取っている。「神がいるのであれば、どうして虐待に苦しむ子供たちを神は救わないのか?」との言葉を語る。
アレクセイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ(アリョーシャ) フョードルの三男。フョードルと後妻の子。修道僧であり、純情で真面目な美青年。神の愛によって肉親を和解させようとする。ゾシマ長老の命で、彼の死後は還俗する。
アグラフェーナ(グルーシェンカ) 妖艶な美貌を持つ奔放な女性。ドミートリイとフョードルのどちらともが狙う妖艶な美女だが、どっちつかずの態度を崩さない。かつては清純な娘で、婚約者に捨てられた過去がある。
カチェリーナ(カーチャ) ドミートリイの元上司の令嬢。ドミートリイの婚約者。高慢で自尊心が非常に高い。
リーザ(リーズ) アリョーシャの女友達で相愛の仲。足が不自由で車椅子を常用している。
グリゴーリイ カラマーゾフ家の忠実な老使用人。
スメルジャコフ カラマーゾフ家の使用人。母は町の乞食女で、スメルジャコフを産んだ直後に死亡。グリゴーリイとマルファ夫婦に育てられた。イヴァン独特の無神論に心酔している無神論者。てんかんの発作という持病を抱えている。「神がいなければ、全てが許される」として猫を縛り首つりにしたり、ピンを含ませたパンを犬に与えるなど動物虐待をしている。
ゾシマ長老 アリョーシャの修道院の長老。余命幾許もない時点で作品に登場。聖人君子とされ、修道院には彼のご利益にあやかろうとする人でいつもあふれている。死後、彼の遺体によって一つの事件が起こる。長老アンヴロシイ、およびザドンスクのティーホンがモデルとされる。

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