桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第106回】

『復活』(トルストイ)※前半

開催日時 2014年2月15日(土) 14:00~17:00
会場 サンライフ練馬 和室(2) 西武池袋線中村橋駅・徒歩5分

開催。諸々コメント。

作品の舞台はロシア。農奴制は廃止されたものの、極貧の農民の犠牲の上に地主等の富裕層の生活が成り立っている時代です。
作者トルストイが人生の晩年において自らに課した重要テーマに真正面から答えを求めようとした作品と言えると思います。

著者

レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ
(Viktor Emil Frankl、1905年3月26日 - 1997年9月2日)
作家、思想家。 「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」、「復活」が三大作品といわれる。当時の平均寿命と比べて驚異的な長寿・82歳の生涯を通して、世界文学有数の長編小説を生み、あらゆる秩序を批判し、暴力を否定した。トルストイ主義と呼ばれるキリスト教的な人間愛と、道徳的自己完成を説いたとされる。
ロシアでは「もっとも偉大な反逆者」とも呼ばれており、その長い嵐のような生涯を通じて、ロシア正教会や政府、文学的伝統、自身の家族とさえ対決した人であったという講評もある。また教育の実践にも力を注いでおり、農奴解放の先駆的実践も行なっている。
トルストイの人生を俯瞰して感じることは決して完璧で高潔な人生を歩んだわけではないという点である。特に前半生は若年層にありがちな、体制への無批判のままの受容と、根拠と地道な努力が伴わない楽観主義が随所に見られる。また人生を通して苦難に直面した際の対処姿勢には賛同するには釈然としない点も多々感じられる。
当時のロシアの風習、社会通念をそのまま受け入れた生き方でもあり、知ってみるとその実態に唖然とすることも少なくない。
トルストイは、結果とした現れた現実に対して生命の永遠性を主張しながら、個々の現象に対しての考察が明快に論じられている一方で、その因果性に言及することなくキリスト教の説く神の存在に全ての原点を求めている。
トルストイの晩年にはその神の存在と自身が持つ愛の精神との融合の試みがなされているが、生命の永遠性の大原理である因果性を思索した形跡は見つけることはできなかった。

トルストイの思想

人生と生命について深く思索し続けたトルストイ。
その中核をなす考え方は何かを考えてみる。
1)人間や社会を超える、根源的・普遍的なものがある。
2)我々の理性は人間が作ったものに従うのではなく、源的なものに一致しなければならないし一致できる。
3)根源的なものに一致していれば、人間は生き抜くことができる。
トルストイの言う「根源的なもの」とは…愛と宗教こそが純潔で高い二つの感情である。

トルストイにとっての神とは

1)生命は不滅である。
2)神を理解しないが、神を信じる。
3)永遠の報いを信じる。
4)良心を承認する。
5)霊と肉が衝突する時、霊が勝利する。
6)神の隣に自然があり、その隣に民衆がいる。

作品のあらすじ(前半)

主人公のドミートリイ・イワーノヴィチ・ネフリュードフ公爵は陪審員として参加した裁判で殺人罪で起訴されたカチューシャに再会し衝撃を受けます。
彼女は若き日のドミートリイ欲望の対象とされ、妊娠。それを境に身を持ち崩したカチューシャは売春婦となり、遂には殺人事件の容疑者になっていました。
そしてその裁判で、殺人容疑がないと思われていたにもかかわらず、不注意や不手際が重なってカチューシャは有罪判決を受けてしまいます。

ドミートリイは過去の行いを悔い、彼女を救うことを決意し奔走し始めます。
カチューシャと面会する中で、刑務所に収容されている人々を取り巻く様々な矛盾、冤罪の実態を目の当たりにし服役者から救済の嘆願を受けるドミートリイ。

その一つひとつに誠実に向き合う中で、ドミートリイにとって人生をかけて取り組むべき3つのテーマが掲げられます。
・土地を百姓達に与えること
・カチューシャを助けて自らの罪を償うこと
・裁判と刑罰について何らかの結果を出すこと
この真実を求めてドミートリイは自らの行動を起こします。

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