桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第119回】

『どん底』(ゴーリキー)

開催日時 2015年3月14日(土) 14:00~17:00
会場 サンライフ練馬 第二和室 西武池袋線中村橋駅・徒歩5分

開催。諸々コメント。

今回はマクシム・ゴーリキー作『どん底』です。
1901年冬から1902年春にかけて書かれた戯曲であり、ロシア社会の貧困層の生活が描かれています。

今回取り上げる作品はロシア文学の一角を構成する社会主義リアリズム文学の代表作とされています。
当時のロシア社会の貧困層が描かれ、木賃宿を舞台に住人達の物語が展開されます。本作にはメインストーリーがなく主人公もいない、いわゆる群像劇です。

ゴーリキーの戯曲は知識階級を描いた作品が多いとされていますが、本作はゴーリキーの初期作品に見られるルンペンプロレタリアートが描かれています。
ゴーリキー作品の特色と言われるロマンティシズムの面影はまだ見られず、リアリズムが作品全体を貫いています。また本作品はゴーリキーのルンペン時代を葬る挽歌、訣別の辞としても知られています。

作品の前半は木賃宿での荒んだ日常生活の描写に費やされます。
錠前屋の妻アンナは病気に伏しています。
木賃宿の住民たちは自分達のことで精一杯で彼女のことを気遣うそぶりもなく、やがてアンナは死亡します。
アンナの死を契機にコストゥイリョフの妻ワシリーサは、夫から自由になることを画策します。ワシリーサには情夫ペーペルがいるが既に心は彼女から離れており、彼女の実妹ナターシャに求愛していました。
姉夫婦の家に居候していたナターシャは姉の夫から虐待を受けていました。

ワシリーサはペーペルに、夫を殺害すれば妹と結婚させ300ルーブリを提供すると共謀を持ちかけます。夫を殺せば、ナターシャと結婚できて虐待から逃れられることもできる。ペーペル自身もコストゥイリョフに2度も牢屋に送られた恨みを晴らすことができる。ワシリーサは夫と別れることができる。皆が幸福になれるのだと説得する。
ペーペルはワシリーサの誘惑にのり、コストゥイリョフを殺害します。
万事計画通りに事が運んだかに見えましたが、その時ワシリーサは予想外の行動に出たのです。
それは...

日本人にとって『どん底』と言えば黒澤明監督の映画として知られています。
ゴーリキーの本作品を、黒澤明監督が小国英雄と共に翻案脚色し、舞台を日本の江戸時代に置き換えて、貧しい長屋に住むさまざまな人間の人生模様を描いた時代劇映画です。原作のモチーフを忠実に映画化した作品としても有名でしょう。

作者

マクシム・ゴーリキー (Максим Горький, 1868年3月28日(ユリウス暦3月16日) - 1936年6月18日) ロシアの作家。本名はアレクセイ・マクシーモヴィチ・ペシコフ(Алексей Максимович Пешков)。ペンネームのゴーリキーとはロシア語で「苦い」の意味。社会主義リアリズムの手法の創始者であり、社会活動家でもあった。

作品の背景とあらすじ

執筆当時のロシア社会の貧困層が描かれ、木賃宿を舞台に住人達の物語が展開される。本作には筋がなく、主人公もいない。アントン・チェーホフからの影響が指摘される。
ゴーリキーの戯曲は知識階級を描いた作品が多いが、本作はゴーリキーの物書きとしての初期作品に見られるルンペンプロレタリアートが描かれている。
しかし、ゴーリキーの特色たるロマンティシズムの面影はほとんどなく、実写主義が全体を貫いている。本作はゴーリキーのルンペン時代を葬る挽歌、訣別の辞として知られている。
コストゥイリョフの妻ワシリーサは、夫から自由になることを画策する。
ワシリーサは情夫ペーペルが、彼女の実妹ナターシャに惚れていることに目をつける。ナターシャは姉夫婦の家に居候していて、虐待を受けていた。夫を殺害すれば、妹と結婚させ300ルーブリを提供しようと申し出る。
ナターシャは結婚することで虐待から逃れられることができ、ペーペル自身もコストゥイリョフに2度も牢屋に送られた仕返しをでき、ワシリーサは夫と別れることができ、皆が幸福になるという。
ペーペルはワシリーサの誘惑にのり、コストゥイリョフを殺害する。
ところが、ワシリーサはペーペルが殺したと訴える。騙されたと知ったペーペルはワシリーサを道連れにしようとし、ワシリーサから計画を持ち込まれたことをしゃべる。
ナターシャは姉と自分の夫となる人が、共謀して義兄を殺害したことを悟り、ワシリーサ、ペーペル、そして自分を牢屋に入れてくれと訴える。
ペーペルとワシリーサは捕まり裁判にかけられ、ナターシャは病院から失踪してしまう。
彼女たちの叔父のメドヴェージェフは警察を首になっていた。犯罪を犯さない者も、貧困という牢獄から抜け出すことを夢見ながらも、抜け出せない。誰一人幸福になることがなく、どん底にいる市民たちは、歌と酒だけを娯楽に日々の生活を送っていく。

主な登場人物

ミハイル・イワーノヴィッチ・コストゥイリョフ 54歳、木賃宿の亭主。
ワシリーサ・カールポヴナ コストゥイリョフの女房、26歳。
ナターシャ ワシリーサの妹、20歳。
メドヴェージェフ ワシリーサとナターシャの叔父、巡査、50歳。
ワーシカ・ペーペル 泥棒、28歳。
クレーシチ・アンドレイ・ミートリイチ 錠前屋、40歳。
アンナ クレーシチの妻、30歳。
ナースチャ 娘、24歳。
クワシニャー 肉饅頭売りの女、40代。
ブブノーフ 帽子屋、45歳。
サーチン 40代ぐらい。
役者 サーチンとほぼ同年輩。男爵33歳。
ルカ 巡礼者、60歳。
アリョーシカ 靴屋、20歳。
クリヴォイ・ゾーブ 荷かつぎ人足。
だったん人 荷かつぎ人足。タタール人の意、ロシアにおいてはイスラム教徒を指す。
名もなく台詞を持たない浮浪人(数人)

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