桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第121回】

『紅はこべ』(バロネス・オルツィ)

開催日時 2015年5月30日(土) 14:00~17:00
会場 サンライフ練馬 第二和室 西武池袋線中村橋駅・徒歩5分

開催。諸々コメント。

作品は1792年9月に始まります。
舞台はフランス・パリ。フランス革命の真っ只中。革命政府の力は強大になり、貴族と名のつく人はことごとく逮捕されてギロチン台に送られていました。
処刑される人数は毎日百人以上に上り、庶民はギロチンを毎日の楽しみにするという異常な状況が続いていました。貴族は身を隠して国外に亡命しようと必死になりますが、その多くは城門の警備兵にみつかって処刑台の露に消えていきました。

そんな折、フランス貴族を国外に逃亡させる一団が現れます。彼らは必ず事前に通告してその数時間後には貴族達を城門の外に連れ出していました。通知される紙には、いつも<紅はこべ>と呼ばれている赤い花の文様がついていたことから、いつからか彼らは「紅はこべ」と呼ばれていました。

革命政府はイギリス貴族の誰かが仕組んでいるとあたりをつけて、総力を挙げて紅はこべ一団を捉えようと躍起になります。
紅はこべの首領は誰なのか? 果たしてこの抗争はどちらに軍配が上がるのか?

本作品は1902年に完成していましたが、出版社でことごとく出版を断られます。作品の出来栄えに自信があったオルツィは作品を戯曲化し1903年ノッティンガムで上演を果たし、戯曲は好評を博して4年間のロングランとなります。
戯曲の成功を経て、ぜひとも小説として出版をしてほしいの声が大きくなり、満を持して出版された小説は大ベストセラーとなりました。

フランス革命の舞台に繰り広げられる人間模様を共々に読み進めたいと思います。

著者

バロネス・オルツィ(Baroness Orczy、1865年9月23日 - 1947年11月12日)
ハンガリー出身のイギリスで活躍した作家・推理作家。 バロネスは男爵(バロン)の女性形。Orczyの英語読みであるオークシイと表記されることもある。日本語で「オルツィ男爵夫人」と訳されることもあったが、オルティ本人が男爵家の出であるため「オルツィ女男爵」と訳す方が正解に近い。
歴史ロマンス作品『紅はこべ』シリーズや安楽椅子探偵の先駆けである『隅の老人』シリーズで人気を博した。

1865年、ハンガリーの由緒ある男爵家に生まれる。父フェリクス・オルツィはアマチュア作曲家・指揮者であり、フランツ・リストら当時の高名な音楽家たちと親交が深かった。2歳のとき、小作人の反乱が起こり、一家はブダペストに移った。後にブリュッセルやパリで教育を受けたあと、1881年にロンドンの美術学校に入学。1894年に学友だったモンタギュー・バーストウと結婚した。

1899年には二人の間に息子も生まれたが、経済的には厳しい状況で自身も翻訳の内職などをして過ごしていた。最初の創作である『皇帝の金燭台(The Emperor's Candlesticks)』を執筆したのもこの頃である。この歴史ロマン作品の売れ行きはさっぱりで、続いて雑誌に短編を書き始める。
当時のシャーロック・ホームズの爆発的な人気に触発され、1901年に『ロイヤル・マガジン』誌に奇妙な老探偵「隅の老人」(The Old Man In the Corner)が登場するミステリ短編を書き始めた。

歴史ロマン作品も諦めたわけではなく、雑誌に短編を連載していたころ、フランス革命を題材に取った『紅はこべ』を完成させていた。当初は出版されず、夫との共作で舞台化したところ大ヒットし、1905年になって小説の形で発行された。この後も続編を書き続け、10作以上にものぼる『紅はこべ』シリーズは自身の名を不朽のものとした。
『紅はこべ』がヒットした後もミステリ短編は書き続け、隅の老人シリーズの他、ロンドン警視庁の女性警官レディ・モリーが活躍するシリーズ『レディ・モリーの事件簿』や、弁護士パトリック・マリガンの登場するシリーズなどを発表した。推理作家の親睦組織であるディテクションクラブにも何度か顔を見せていたという。
安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)のはしりとされる隅の老人を登場させ、安楽椅子探偵の形を決定づけたことが評価されている。また女性探偵を登場させた最初期の一人としても知られる。
第二次世界大戦中はモンテカルロに移住したが、1943年に夫を病気で亡くし、イギリスに戻って1947年に死去した。

作品出版までの経緯

作品は1902年に完成していたが、持ち込んだ出版社すべてに出版を断られた。
作品の出来に自信のあったオルツィは、これを戯曲化する。この戯曲は1903年のノッティンガムでの上演を皮切りに、イギリス各地で上演される。1905年にはついにロンドンで上演され、4年間のロングランとなった。
すると今度は出版社のほうから「ぜひとも小説版紅はこべを出版させてくれ」との問い合わせが殺到した。満を持して出版された小説版は大ベストセラーとなった。
これを受けて、オルツィは次々と続編を発表。「紅はこべシリーズ」とでも言うべき一大連作となった。
東京創元社版の最初の題は『紅はこべ団』。文庫化に際し『紅はこべ』に改題された。

作品のあらすじ

舞台は1792年、フランス革命の嵐の真っ只中のフランス。
オーストリアとの戦争が始まり、貴族、聖職者階級の人々がオーストリアとの密通を疑われ、次々に捉えられ、ギロチンに送られていた。

そんな中、鮮やかな手口と大胆な知略で捕らえられた貴族を救い出し、イギリスへ亡命させる謎の一団が現れる。革命政府が血眼になって捕らえようとするが、そのたびに彼らはその追跡を振り切り、貴族達と共に逃げ去ってしまう。
残された紋章からいつしかその一団は「紅はこべ」と呼ばれるようになっていた。

「紅はこべ」がイギリス貴族のグループらしいとめぼしをつけた革命政府は、その撲滅に乗り出す。
「紅はこべ」の首領の正体を探り、組織を壊滅させる目的を帯びて、ショーヴランが革命政府全権大使の名目でイギリス宮廷に送り込まれる。

ショーヴランはまず、イギリス社交界の花と謳われるレディ・マルグリート・ブレイクニーに接触する。イギリス社交界きっての伊達男と言われているサー・パーシー・ブレイクニー准男爵の夫人で、夫婦そろって社交界の人気者であり、皇太子の親しい友人として知られている。彼女はフランス人で旧姓をマルグリート・サン-ジュストといい、結婚前はコメディ・フランセーズの女優として活躍していた。
その頃にショーヴランとの面識もあった。共和主義者であるが、今の革命政府は行き過ぎで信用できないと思っている。
フランス一の才媛と歌われた彼女が伴侶として選んだのはイギリス一の富豪パーシーだった。

そんなマルグリートに、ショーヴランはある取引を持ちかける。彼女の兄であり親代わりでもあるアルマン・サン-ジュストが革命政府に対して批判的な意見をつづった手紙を手に入れた。この手紙を無かった事にして欲しければ、「紅はこべ」探索の手伝いをしろ。兄の命が惜しければ、おとなしく言う事を聞け…。愛する兄の命乞いのために、マルグリートはやむなくショーヴランの手先となって、社交界の中を暗躍する。

彼女の夫サー・パーシーとマルグリートとの間には冷たい溝があった。 事の発端は、サン・シール侯爵の居所を革命政府に密告したのが妻マルグリートだったことをパーシーが知ったからである。
かつてサン・シール侯爵家の家庭教師をしていたマルグリートの兄アルマンはサン・シール侯爵令嬢と恋仲となり、アルマンのことを平民風情で思い上がるなと怒った侯爵は、アルマンを半殺しの目に合わせた。兄を殺されそうになったマルグリートは侯爵を激しく憎んでいたのだ。密告すればサン・シール侯爵が死刑になる可能性があると知りながら、あえて革命政府に居所を知らせた妻に、パーシーは心を閉ざしていた。 しかしそれはパーシーの本心ではなく、彼は妻を心から愛していた。愛するがゆえに妻に自らの正体を隠し、そして悶々と思い悩んでいた。

サー・パーシーこそが「紅はこべ」のリーダーだった。
パーシーはショーヴランが仕掛けた罠をかいくぐり、ド・トゥルネー伯爵をギロチンから救い出すためにフランスへと旅立つ。その動きを察したショーヴランも後を追う。
様々な出来事を経て「紅はこべ」の正体が夫であると気づいたマルグリートも、愛する夫と兄の命を守る為に、ドーヴァーを越える。

3人の策略に満ちた、手に汗握る追跡行が始まる。
その結末は…。

登場人物

マルグリート・サン・ジェスト ブレイクニー夫人。フランス人。コメディ・フランセーズの元女優。ヨーロッパ随一の才女といわれる。
パーシー・ブレイクニー卿 英国の大富豪。皇太子の親友。容姿端麗で流行を流行らせる一方で、鈍感な間の抜けた男。
アルマン・サン・ジェスト マグリートの兄。フランス人。共和主義者だが急進派に批判的。
ショーヴィラン フランス革命政府の全権大使。紅はこべ壊滅の特命を帯びている。
ドガ ショーヴィランの秘書。
ビボー  フランス革命政府軍曹。辣腕の城壁警備役。
ジェリーバンド ドーヴァー港にある「漁師の宿」の主人。
サリー ジェリーバンドの娘。
ヘンプシード ジェリーバンドの友人。
小ピット イギリス首相。
グレンヴィル イギリス外相。 アントニー・デューハースト卿 イギリスの青年貴族。
アンドリュー・フォークス卿 イギリスの青年貴族。アントニーの友人。
ド・トゥルネー伯爵 フランス貴族。紅はこべの救出を待つ。
ド・トゥルネー伯爵夫人 同夫人。ひと足早く紅はこべによってイギリスに亡命している。
ド・トゥルネー子爵 伯爵の息子。母妹と共に亡命。
シュザンヌ 伯爵の娘。マルグリートの友人。
紅はこべ 謎の人物

時代背景

フランス:フランス革命の佳境を迎えている時期。
フランス革命中に共和派のジロンド内閣が成立すると、絶対王政を展開する隣国のプロイセン・オーストリアは 革命の波及を恐れて革命に干渉。 ジャコバン政権が成立する過程で共和制が成立、国王ルイ16世が処刑されると革命の波及を恐れたイギリスが 対仏大同盟の結成をヨーロッパ諸国に呼びかけ、フランス革命を早く終わらせようという外交政策をすすめた。 フランス革命の成果のひとつとして自由・平等の精神がナポレオン1世により西欧諸国へ伝播し、反動的なウィーン体制の成立後に誕生した自由主義・国民主義・民族主義に大きな影響を与えた。

フランス革命関連の年表


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