桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第130回】

『異邦人』(カミュ)

開催日時 2016年2月20日(土) 14:00~17:00
会場 練馬区 生涯学習センター
西武池袋線練馬駅・徒歩7分

開催のあいさつ

今月はカミュの作品です。 桂冠塾では第4回(2005年7月)で『ペスト』を取り上げて以来2作品目となります。取り上げていなかったことに意外な感じもあります。

きょう、ママンが死んだ。

この一節から始まるカミュの代表作。当時フランスの植民地だったアルジェリアの首都アルジェに住む青年ムルソーが殺人を犯して裁判で死刑が宣告される小説です。

「太陽が眩しかったから」

殺人の理由を問われたムルソーはそう答えました。
映画化されて有名になった一言でもあります。

作品の最終盤(第2部第5章)では御用司祭とのやり取りが克明に再現されます。
人間にとっての幸福とは何か。
自身とまわりとの人との価値観、感受性の相違によって、自分自身の言動が意図しない意味で受取られていることはないだろうか。
私達の現実の人生において、他者の恣意的な言動によって、自分自身が意図しない罪に問われることはないのだろうか。
様々な複雑な思いを思い起こさせられるという意味でも問題作品と言えるしょう。
執筆された時代背景も考慮しつつ、生きることの不条理を追求したと言われるカミュの作品を一緒に読み進めてみたいと思います。

作品の構成・あらすじ

アルジェリアのアルジェに暮らす主人公ムルソーの元に、母の死を知らせる電報が、養老院から届く。母の葬式のために80Km離れた養老院を訪れたムルソーは、涙を流すどころか、特に感情を示さずに淡々と葬式を行なった。
葬式の翌日、たまたま再会した旧知の女性と情事にふけるなど、母の死によって動じたわけでもなく、普段と変わらない生活を送る。
母の死から2週間後の週末。ムルソーは友人レエモンのトラブルに巻き込まれて、アラブ人を拳銃で殺害してしまう。

ムルソーは逮捕され、裁判にかけられることになった。
裁判では、母親が死んでからの普段と変わらない行動を問題視され、人間味のかけらもない冷酷な人間であると糾弾される。
最初の一発を放ったあと、4発の弾丸を撃ち込んだムルソーは、母の死の後も淡々と暮らしていることを理由に冷酷な人間であると糾弾され斬首刑を宣告された。
裁判の最後では、殺人の動機を「太陽が眩しかったから」と述べた。
死刑を宣告されたムルソーは、懺悔を促す司祭を監獄から追い出し、死刑の際に人々から罵声を浴びせられることを人生最後の希望にする。

主な登場人物

ムルソー
マリー
レーモン
マソン

著者

アルベール・カミュ(Albert Camus)1913年11月7日 - 1960年1月4日
フランスの小説家、劇作家、哲学者。フランス領アルジェリア出身。アルジェ大学卒業後ジャーナリストとして活動、第二次世界大戦中に刊行された小説『異邦人』、エッセイ『シーシュポスの神話』などで注目される。
『カリギュラ』『誤解』などを上演し、劇作家としても活動した。戦後に発表した小説『ペスト』はベストセラーとなったが、エッセイ『反抗的人間(フランス語版、英語版)』はその思想をめぐって毀誉褒貶を受けた。
1957年、史上2番目の若さでノーベル文学賞を受賞している。1960年、交通事故により急死した。
カミュの著作は「不条理」という概念によって特徴付けられている。
カミュの言う不条理とは、明晰な理性を保ったまま世界に対峙するときに現れる不合理性のことであり、そのような不条理な運命を目をそむけず見つめ続ける態度が「反抗」と呼ばれる。
そして人間性を脅かすものに対する反抗の態度が人々の間で連帯を生むとされる。
しかしプロレタリア革命を含め、あらゆる政治的暴力を忌避しようとするカミュの姿勢は盟友サルトルとの間で論争(カミュ=サルトル論争)を引き起こし、戦後文壇においてその立場を孤立させていく原因ともなった。
タレントのセイン・カミュは従孫(兄の孫)にあたる。

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