桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第132回】

『光あるうち光の中を歩め』(トルストイ)

開催日時 2016年4月16日(土) 14:00~17:00
会場 サンライフ練馬 第二和室  西武池袋線中村橋駅・徒歩5分

開催のあいさつ

ロシアの文豪トルストイの後半生を代表する短編作品の一つです。
貴族の家系を出自に持つトルストイは、教育と農奴制の改革を志し、さらに文豪としての名声と富を得ますが次第に人生の意味に疑問を感じるようになっていきます。
様々な紆余曲折を経て、原始キリスト教的な考え方に収斂されていきますが、本作品はそうしたトルストイの思索の変化の中で生まれたと見ることができます。

主な登場人物は、シリア出身の商人ユヴェナリウスの一人息子ユリウスと、ユヴェナリウスの奴隷の子供パンフィリウス。二人が年数を重ねる中で対象的な人生を送る形で物語が進んでいきます。

題号の「光あるうち光の中を歩め」という言葉は『ヨハネの福音書』12章35節からとられています。
トルストイが描き、自らが歩もうとした人生はどのようなものであったのか。
そしてその根源にある思想はどのようなものだったのか。
共々に考えてみたいと思います。

作品のあらすじ

作品の冒頭では、複数の人々が自分たちの人生を振り返ってどう思うかを話し合っています。その場にいる誰一人として満足した人生を送っていないことは認めていますが、キリスト教に倣った生活を送れるかというと現実にはキリスト教に説かれたような生活は難しく、実際には子供の教育は世俗的に行われていました。

話の舞台は古代のローマ帝国に遡ります。
物語はキリスト生誕から100年の時代。皇帝トラヤヌスが政治を行なっていた当時、イエス・キリストのまた弟子たちはユダヤ教から派生した異端の教えとされておりその信者は社会的にも異質とされていました。主な登場人物は、シリア出身の商人ユヴェナリウスの一人息子ユリウスと、ユヴェナリウスの奴隷の子供パンフィリウス。二人が年数を重ねる中で対象的な人生を送る形で物語が進んでいきます。

ユリウスの父は苦労して仕事で成功した宝石商。町の人々の尊敬も集めています。
ユリウスとパンフィリウスは親友で美男子。同じ哲学者のもとで学問を学びますが、パンフィリウスは引っ越すことになり途中で学問を辞めて町を去りました。
2年後、町の往来で再会した二人。パンフィリウスはキリスト教徒として多くの信者と共に共同生活をしていることを話します。当時キリスト教徒は陰謀の一味徒党とみなされていましたが、パンフィリウスは実際にどのような生活をしているか見にきてほしい、一緒に暮さないかとユリウスを誘います。

ユリウスはパンフィリウスの誘いを断り、商人としての生活を続けます。
その後もユリウスはキリスト教徒としての生活に入る機会に遭遇しますが、その都度考えを思い留まらせて現状の生活を続けます。
4回目の機会を迎えたときユリウスはついにキリスト教徒の門をたたくことになります。
それは、ユリウスは行政官になって帝国本部の命令でキリスト教徒の活動を押さえる作業に取りかかった時です。そこで久し振りにパンフィリウスと再会し、結婚、教育、労働について話し合います。
妻エウラーリアの死後、ユリウスは自らパンフィリウスを訪問し、それまでの罪を懺悔してパンフィリウスに励まされたユリウスはキリスト教的な生活に入り、幸福な人生を送って20年後にこの世を去りました。

トルストイ思想

※トルストイ思想の柱となる考え方
1)人間や社会を超える、根源的・普遍的なものがある。
2)我々の理性は人間が作ったものに従うのではなく、本源的なものに一致しなければならないし、一致できる。
3)根源的なものに一致していれば、人間は生き抜くことができる。
トルストイの言う「根源的なもの」とは、「愛と宗教こそが純潔で高い二つの感情」である。

※トルストイにとっての神とは
1)生命は不滅である。
2)神を理解しないが、神を信じる。
3)永遠の報いを信じる。
4) 良心を承認する。
5) 霊と肉が衝突する時、霊が勝利する。
6)神の隣に自然があり、その隣に民衆がいる。

トルストイの思想的背景

・キリスト教の発祥
・ユダヤ教からの派生とその起源
・全知全能の一神教
・イエスキリストとは
・第3のローマ「ロシア」
※なぜ宗教が必要か。宗教はなぜ生まれたのか。
※「神」とは何か。キリスト教が説く創造神「ヤハウェ」はなぜ生まれたのか。
※キリスト教的生き方は評価できるか。

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