桂冠塾

開催内容 桂冠塾【第139回】

『三四郎』(夏目漱石)

開催日時 2016年11月12日(土) 14:00~17:00
会場 勤労福祉会館 和室(小)
西武池袋線大泉学園駅・徒歩3分

開催。諸々コメント。

来月12月9日は夏目漱石没後100年に当たる日です。 節目を迎える時期にあわせて今月は漱石の作品を取り上げます。
すでに「こころ」「吾輩は猫である」は取り上げましたので今回は「三四郎」を取り上げます。

この作品は明治41年に朝日新聞の連載小説として発表掲載されました。
福岡・豊前から上京してきた青年・小川三四郎が東京で様々な人達に出会って経験した出来事や恋愛が描かれています。

東京での新しい生活を始めた三四郎は同郷の先輩である野々宮を訪ねる。その帰り道でうちわを持った女性に惹かれる。
9月になって大学の授業が始まったが三四郎は授業に興味を持てない。三四郎は佐々木与次郎と下宿しているお宅の「広田先生」を紹介されて会ってみると汽車の中で会ったヒゲの男性であった。野々宮は広田先生の元弟子で東京大学の教授に推薦する運動をしていた。

三四郎は入院中の野々宮の妹よし子の見舞いに行き、池のほとりで見た女性と再会し三四郎の心はざわついた。
後日、広田先生の引っ越しの手伝いにいくと、三度くだんの女性に会った。女性のは里見美禰子であると知る。彼女の話し方は独特でまだ東京に慣れていない三四郎には難解な面もあった。

その頃団子坂では菊人形が有名であり、三四郎も美禰子、野々村、広田らと見物に出かけた。三四郎は美禰子と池のほとりで二人で話す機会を得て、彼女に思いを持っていることを自覚する。
三四郎は野々宮達が探しているのではないかと気にするが、美禰子は「迷える子(ストレイシープ)わかって?」と謎めいた言葉を重ねる。三四郎はその真意をはかりかねて困惑する。

その後も様々な出来事が起きますが、なかでも三四郎が女性に恋する様子が多くの読者を惹きつけました。
上京する列車の中で出会った女性と名古屋で同宿するが何事もなく「度胸のない方」と言われ、東京で出会った野々宮よし子、里見美禰子(みねこ)とも何も起こらない。
中でも里見美禰子に魅力を感じる三四郎であったがその結末はどうなるのでしょうか。

作品のあらすじ

【起】(一~二)
熊本の高等学校を卒業した小川三四郎は、東京帝国大学に入学するため、汽車で東京へ向かっていた。
車中で向かい合わせた女と名古屋の旅館で同宿することになり、一つ蚊帳(かや)の中で寝たが、事に及ぶことはなく、別れ際に女は「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」と言って笑う。
名古屋からは、乗り込んできた髭の濃い中年男と話す。
日本もこれから「発展するでしょう」といえば「亡びるね」と返され、「日本より頭の中の方が広い」「囚われちゃ駄目だ」などと教えられて、はじめて熊本を出た気になる。
東京での新しい生活が始まり、同郷の先輩で、すでに新進の研究者である理科大学の野々宮を訪ねる。
野々宮と話したあと、森に入って池を見ていると、看護婦と二人連れの若い女が岡の上に現れ、三四郎の前に白い花を落として立ち去っていく。

【承】(三~七)
9月になり、大学の授業が始まるが、三四郎は授業にあまり興味を持てない。
知り合った佐々木与次郎という学生から広田先生という人を紹介されるが、会ってみると汽車で話した中年男で、広田は野々宮の先生でもあった。
野々宮の妹よし子が入院中と聞いて三四郎は大学病院に彼女を見舞い、そこで池のほとりでチラ見した「池の女」と出くわして強い印象を受ける。
その後、広田先生の引っ越しの手伝いに行くと、あの「池の女」も現れ、彼女は野々宮の友人、里見の妹だと知る。
仕事の合間に二人は並んで雲を見たり、先生の画帳を開いて「人魚」(マーメイド)の絵を見たりする。

その後、同じグループで団子坂の菊人形見物に出かけるが、三四郎と話しながら歩くうち美禰子が体調を崩し、二人はグループからはずれて小川のほとりで休む。
野々宮さんたちが探しただろう、と三四郎が気にすると、美禰子は「責任を逃れたがる人だから丁度いいでしょう」
「迷子の英訳を知っていらしって?」
「迷える子(ストレイ、シープ)――解って?」となどと謎めいた言葉を連ね、三四郎は困惑する。

こうして美禰子に惹かれつつその謎に苦しむ三四郎は、大学の運動会でまたよし子と美禰子に会ったり、「広田を大学教授に」と運動する与次郎らの集会に出たりと、新しい経験を重ねてゆく。

【転】(八~九)
与次郎に金を貸したものの、返さないので催促すると、美禰子が用立てすると言っているというので、三四郎は美禰子宅を訪れる。
美禰子は三四郎を銀行に連れて行って金を渡し、その足で二人で美術展覧会に行くことになる。
会場に入って野々宮がいるのを目にするや否や、美禰子は三四郎の耳もとで何かをささやくが、何を言ったのか少しもわからない。
建物を出てから問いただすと、
「野々宮さん。ね、ね……解ったでしょう」
「野々宮さんを愚弄したのですか」
「あなたを愚弄したんじゃないのよ」と、やはり謎の残る会話を交わす。

【結】(第十~十三章)
借りた金を返すため、三四郎は画家の原口宅を訪れ、そこで絵のモデルをしている美禰子に会う。
その帰り、用事はなんだったのかと聞かれたので、「あなたに会いに行ったんです」と思い切って言う。が、美禰子は「すこしも刺激に感じない」ようす。
そこへ人力車に乗った若い立派な紳士が現れ、挨拶もそこそこに美禰子を連れ去るが、この紳士が美禰子の婚約者であることが、やがてわかる。
日曜日、美禰子が来ている教会を訪ね、三四郎は先日返しそびれた金を返す。
美禰子は三四郎をしばらく眺め、やがてかすかなため息とともに言う。
「われは我が咎を知る。我が罪は常に我が前にあり」
原口の絵が完成し、三四郎は仲間たちと展覧会に出かける。
「絵はどうだ?」と尋ねる与次郎に三四郎は「森の女という題が悪い」。
「じゃあ、何とすればいいんだ」と問われて、口の中で「迷羊(ストレイシープ)、迷羊(ストレイシープ)」と繰り返す。

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